目の前の一人と向き合い、その人らしい暮らしを支えていく。介護福祉士の毎日は、そんな小さな積み重ねでできています。
今回お話を伺ったのは、25年以上この道で働き続けてきた介護福祉士の高橋弥生さん。介護の仕事を志したきっかけや働いている上で意識していることなどをインタビューを通してお聞きしました。
介護に興味を持ったのは老人ホームへの訪問がきっかけ
ー介護の仕事を志したきっかけは?
介護の仕事に関心を持ったのは、中学生の頃でした。祖父と何気なく話している中で「近くに老人ホームがあるんだよ」と聞いて、初めて介護という仕事を意識しました。その流れで、夏休みに祖父と一緒に見学に行ったのですが、そこで職員の方と直接お話しをさせてもらったときに「こういう仕事もいいな」と感じたのが始まりです。
見学したとき、特に印象に残ったのは、職員さんがご利用者の方と同じ目線で向き合い、寄り添いながら会話をしていた姿でした。ご利用者の方も笑顔で応じていて、楽しそうにやり取りをしていたことが、中学生の自分にはとても心に残る光景でした。「寄り添う」ということの意味を、そのとき初めて実感したように思います。
その気持ちは高校に進んでからも変わらず、自然と「介護福祉士を目指そう」と考えるようになりました。その頃、祖父の介護が必要な状態になり、実際に私自身が祖父の世話をするようになったことも大きかったです。学校で学びながら介護を経験する中で、この道に進む決意が固まりました。
ー仙台エコー医療療育センターを選んだ理由は?
私は地元で働きたいという思いが強かったので、専門学校の先生に話をして地元の施設を中心に実習先を探してもらいました。老人ホームでの実習はもちろん印象に残っていますが、やはり心に残っているのは、仙台エコー医療療育センターでの実習です。
そのときに初めて、重度の障害を持つ利用者の方々と出会いました。それまで介護といえば「お年寄りを支える仕事」というイメージしかなかったのですが、そのイメージが大きく変わったことを覚えています。言葉で思いを伝えることが難しくても、それぞれの方法で気持ちを表現している利用者さんがたくさんおられて、職員の方々は「この方は今、何を望んでいるのか」と丁寧に考えながら接していました。その姿がとても印象的でした。
また、障害を持ちながらも生き生きと生活している利用者さんの姿から、逆に自分がエネルギーをいただけるような感覚がありました。25年以上前のことですが、そのときの印象は今も鮮明に残っています。
利用者さんからの反応を大切に
ー1日の業務の流れを教えてください
今は子育て中ということもあり、日勤のみで働いています。朝、出勤すると、利用者さんがすぐに気づいて「この人が来たんだ」と笑顔を見せてくださったり、「おはよう」と声をかけてくださったりするのですが、その瞬間に「今日も一日が始まるな」って自分の中でスイッチが入ります。
そこから着替えや食事の介助を行い、その後はお風呂、排泄の支援に入ります。利用者さんに「朝が来た」「お昼が来た」という流れを感じて生活してほしいので、日常生活のひとつひとつを大事にしながらスケジュールを組んでいます。昼食をとってお昼寝をし、起きたらおやつを食べる。そんな毎日のリズムを支えるのが私たちの役割です。
ーやりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
やりがいを感じるのは、やはり利用者さんの反応を見られるときです。朝、名前を呼んで挨拶をして、反応が返ってきたときに「存在を必要としてくれているのだな」と思えます。
介助やケアをしていても「これでいいのだろうか」「自己満足で終わっていないだろうか」と不安になることもあります。ですが、表情が和らいだり、リラックスした姿を見せていただいたりすると、「これでよかったんだ」と思えるんです。時間をかけ関係性を築き上げ、笑顔を引きだせたときは特に嬉しくなります。
25年間働いてきた中で、印象的なエピソードも数えきれないほどあります。その1つは、施設内でイベントを開催したときです。クリスマス会や夏祭りなど、季節に合わせてゲームや企画を準備し、利用者さんに楽しんでいただくよう工夫してきました。提案したものを形にして、実際に利用者さんが喜んでくださる様子を目にすると「やってよかった」と心から思います。普段は表情に出しにくい方でも、その場の雰囲気を一緒に楽しんでくださっているのが伝わってくるんです。
また、ご家族から「子どもがこういう職員さんと過ごしていることで安心できる」と言っていただけることもあります。利用者本人だけでなく、ご家族にとっても支えになれているのだと実感できるとき、本当にこの仕事を続けてきてよかったと感じます。
ー仙台エコー医療療育センターは、多職種が連携して利用者さんと接している点も特徴だと思います。この環境で働いていて感じていることを教えてください。
利用者さんの多くは医療的ケアが欠かせないので、看護師さんの存在は本当に心強いです。たとえば痰の吸引や状態の確認などは、看護師さんがすぐに対応してくださるからこそ、私たちは安心して日常生活の支援や活動に取り組めます。
皮膚トラブルや体調の変化があったときも、看護師さんに相談しながらケアを進めます。自分たちだけの目線ではどうしても限界があるので、他職種の方からのアドバイスで改善につながると、とても安心できます。お互いに意見を出し合い、相談しながら進めていける環境があるのは、この施設ならではの強みだと感じています。
「介護」は、生活を一緒につくっていくこと
ー入職時から比べて「成長したな」と思うことはありますか?
介護に対する考え方も、学生時代からは大きく変わりました。学んでいた頃は「お世話をする仕事」という理解が中心でしたが、経験を重ねる中で、それ以上に「生活を共に支える仕事」だと実感するようになりました。単に手助けをするのではなく、不便さに寄り添い、日々の生活を一緒につくっていく仕事であると、今は思っています。
本当の家族ではありませんが、家族に近い距離で日々を支える役割を担っているのだと思います。家族の代わりになって、毎日の生活がより豊かになるようサポートしていければ……いう思いは25年間働くなかで少しずつ積み重なって強くなってきました。
利用者さんの一日は、誰かの声かけや関わりによって楽しくもなれば、孤独に感じることもあります。だからこそ「今日も一日楽しく終われた」と思ってもらえるような接し方を大切にしています。
また、入職したときから変わらず意識していることは、「笑顔を忘れない」ということです。マスク生活が続いていますが、利用者さんは表情をよく見ているので、笑顔やちょっとした仕草を欠かさないよう意識しています。
今は主任という立場でもあるので、後輩の育成にも力を入れたいと考えています。日々の業務に追われる中でも、教育や研修の機会を大事にして、自分も一緒に学びながら後輩に伝えていきたいです。私自身もリフトインストラクターや喀痰吸引の資格を取得しましたし、これからも研修や学びを重ねてスキルアップを続けたいと思っています。
今は後輩や新しく入職してきた職員も多く、一緒に働く中で意識しているのは「聞きやすい環境をつくること」です。初めて現場に入る人は誰でも緊張します。不安な気持ちを抱えたまま仕事をするのではなく、気軽に声をかけ合える雰囲気を大切にしたいと思っています。どうしても忙しさからピリピリした空気になることもありますが、「いつでも聞いていいんだよ」という環境を整えることは、何よりも大切だと考えています。
ー仕事以外のお話も少し聞かせてください。お仕事とプライベートのバランスは、どんなふうに取られていますか?
今は子育て世代として、家庭と仕事の両立に励んでいます。シフト制の勤務は調整が難しい部分もありますが、上司や同僚が理解してくれて、配慮してもらえるのは本当にありがたいです。
私には高校3年生と小学1年生、そして4歳の子どもがいます。幅広い年齢の子育てを続けながら、周りのフォローを受けて働いてきました。子どもたちには「こういう仕事をしているんだ」と知ってもらいたいと思っていて、その気持ちが日々のエネルギーになっています。
人との関わりを大切にできる人と働きたい
ーどんな人がこの仕事に向いていると思いますか?
この仕事に向いているのは、やはり人と関わることを大切にできる方だと思います。利用者さんは、必ずしもすぐに反応を返してくださるわけではありません。だからこそ、忍耐強く向き合えることが必要です。そして、介護の現場は決して一人では成り立ちません。チームで連携して取り組む力が欠かせない仕事です。
また、たくさんの「引き出し」を持っておくことも大切だなって思います。利用者さんの気持ちや表情を読み取り、その方に合った関わり方を選ぶには、多くの工夫や経験の積み重ねが必要です。
私自身も最初からコミュニケーションが得意だったり、引き出しを多く持っていたわけではなく、人見知りで緊張しやすい性格でした。それでも「いっぱい話しかけよう」「自分から歩み寄ろう」と意識して、少しずつ引き出しを増やしてきました。先輩のやり方を見て学んだり、本を読んだり、研修に参加したりして、経験を重ねながら自分なりの接し方を身につけていったと思います。
ーありがとうございました!
仙台エコー医療療育センターでは、生活支援員(初任者研修修了・介護福祉士)として働く仲間を募集しています
重症心身障害児(者)のケアは、高度な知識と繊細なサポートが求められる現場です。日常生活の支援だけでなく、医療的ケアやリハビリといった多職種との密な連携が欠かせません。その分、専門職としてのスキルを磨き続けられる環境があります。
「より専門性を高めたい」「介護の現場で長く力を発揮したい」。そんな想いを、ここでは形にできます。少しでも気になる方は、まず施設見学から始めてみませんか?現場の雰囲気を知り、実際に働く自分の姿をぜひイメージしてみてください。
【内定までの流れ】
①施設見学
②書類選考
③面接
④内定
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